オーストラリア・ミートジャッジ
日本大学 坂上倫実

 今回のオーストラリア大会で、日本とオーストラリアの枝肉の大きさの違い、また生産における規模の違いを目のあたりにしました。オーストラリアの食肉、特に牛肉は世界に輸出することを目的として生産されており、その輸出国のなかには日本も含まれています。

 日本の牛肉の特徴はロース芯に脂肪がよく交雑している、霜降り肉と呼ばれるものです。しかし、オーストラリアの牛肉は赤身が多く、脂肪交雑は多くありません。日本とオーストラリアでは求める肉の品質に根本的な違いがあるのです。そのため、ジャッジングの目の付け所も日本と違い、混乱してしまいました。ですが、オーストラリアには赤身の牛肉だけでなく、ロース芯にある程度脂肪が交雑している牛肉も数多く生産されています。これらの牛肉は主に輸出用で、日本へ向けての牛肉たちです。

 オーストラリア大会のジャッジングの際、国内用と輸出用の枝肉に分けられていました。これは輸出先の国の人々に「おいしい」と感じてもらうためです。オーストラリアでは、輸入国の人々がどのような肉を求めているのかアンケートを取り、実際に肉を食べて貰うなどの努力をすることで、オーストラリア産牛肉を求めてくれるように研究していることがわかりました。

 私ごとになりますが、家庭では日本の和牛肉よりオーストラリア産の牛肉を食べています。日本の和牛肉はオーストラリアの牛肉と比べて量が少ないのに高価格で販売され、オーストラリア産の牛肉は量が多く低価格で販売されています。量と値段の違いには生産背景が影響されているのだと思います。今回、滞在先のウォガウォガで肥育場を見学させて頂きました。そこは牛が1万7000頭肥育出来る広さを持ち、辺り一面、見渡すと牛だらけと、日本では見られない光景でした。オーストラリアでは日本よりも広大な土地で数多くの牛を肥育し出荷出来るからこそ、オーストラリアの牛肉は量が多く低価格なのだとわかりました。

 私はオーストラリアの牛肉は、常にその情報が世界へ発信されるために、世界中の人々の口に運ばれているのだと思いました。輸出国が求めているニーズに応えようとしているオーストラリアの食肉業界は素晴らしいと感じました。一方で、日本の肉も世界の人々に知って欲しいとも思いました。日本の肉は価格は高いですが、口の中でとろけるような柔らかさという、世界の牛肉には無い大きな特徴を持っています。この食感とうま味を世界の人々が知ったならどう感じるだろうか...。

 人間は常においしいもの、新しい刺激を求めています。世界の人々は日本の和牛の食感を知らない人が多いです。もし日本の和牛を世界の人々が食べたら、どにように評価するのでしょうか、とても興味深いです。この評価によって日本の牛肉がよりおいしくなり、世界に認められる日本の食材だと認めてもらえるようになれば良いなと今大会を終えて思いました。